映画「わが母の記」を観てきました


中学の頃、読み漁った井上靖さんの小説の映画化ということで
映画 「わが母の記」 を観てきた

井上靖さんの数ある小説の中でも 「しろばんば」 は
今なお記憶の奥に留まっている作品の一つである

その 「しろばんば」 は 「わが母の記」 に続いており

主人公が老いていく母を自宅に引きとったことをきっかけに
長年抱えていた母への拘りから解放されていく過程の作品でもあった。



まず印象的だったのは映像が美しいこと

その美しい深い自然の下で、主人公の癒されぬ心の葛藤や
登場人物の生き様が穏やかに上品に優しく描かれた作品だった

年老いた母を看ている長女夫婦が住む伊豆と
主人公が住む世田谷の家が中心となって物語は進行していく

その伊豆では、事故で寝込む娘婿に嫌味を言い
娘の気持ちを振り回す八重の姿はリアリティーがある

その母にほとほと手を焼き限界になると八重は
役所広司さん演じる洪作の世田谷の家に一時預けられるのだが

そんな時の樹木希林さん演じる八重の行動と
取り巻く家族の姿が愛情深く映し出される

この時の八重の行動の切なく可愛いこと



伊豆からやってきた八重を洪作一家の人々は
温かく迎え入れて楽しく面倒を看ているのだが

どんなに大事にされても、八重にとってはそこは姥捨て山で

伊豆の家が恋しい八重の起こす珍事件は
クスッと笑えるがどこか切ない場面が続く

巾着袋と懐中電灯を持って伊豆に帰ろうとする八重と
洪作一家の人々のドタバタは見ごたえ充分なところ

また家にやってきた母と向かい合う洪作と八重の距離感も
また八重の本心をやがて知ることになる洪作の姿も涙をさそう



八重がいちばん落ち着く伊豆の実家で
認知症の母の面倒を最後まで看ていたのは長女の志賀子

母をみとったその志賀子に、洪作がかけた言葉がある

洪作のその言葉で淡々としていた志賀子は
糸が切れたように泣き崩れるのだが・・・

普通の事が普通にこの映画の中に織り込まれていたのは良かった 
 


スクリーンに登場する人物は
誰も彼もが生き生きと描かれていた

誰も何も言わないことをいいことに
実家の骨董品を次々に持ち出していく二女の桑子

しかし彼女はあっけらからんとした明るくてお洒落で
どこか憎めない人物の一人でもある

とっさの判断力でピンチの洪作を救い
しっかり支えていく決断力を桑子は持っている

映画の底辺には問題を感じさせながらも
いつも優しさと救いに満ちていた



宮崎あおいちゃんはじめとする洪作の子供達のことも織り交ぜながら
日本の風土に根付いた身近な生活が息づいている作品でもあった

それにしても樹木希林さんのおばあちゃんぶりは
どこか可笑しくて、やんちゃで切なくて

川奈ホテルでの誕生日会の様子とか
世田谷の家や巾着袋を下げて動き回る様とか本当に見ごたえたっぷりだった

生活に追われていない当時の上流世界の人々を上品に描きながらも
人間のか弱く切ない愛憎が底辺に流れているような作品だった



蔽い茂る木々や渓谷に光が差し込んで
その美しい伊豆の優美さは交錯してスクリーンを覆い尽くし

画面からは水の音、木々を通り抜ける風の音までも聞こえてきそうだった

熊野山墓地にあがる坂道、二岡神社のロウソク、滑沢渓谷
日本の自然は実に奥深く美しいな~と改めて実感

久し振りに伊豆へ行ってみたくなった
いつかあの川奈ホテルに泊まってみたい

帰りに購入したパンフレットは72ページもあり文集のような作りだった
ザラッとしたわら半紙のような紙質がどこか文学的で映画とあっていた。


DSCF4374.jpg



第35回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門で
    審査員特別グランプリを受賞

キャスト: 役所広司、樹木希林、宮崎あおい、三國連太郎、南果歩
      キムラ緑子、ミムラ、菊池亜希子、三浦貴大、真野恵里菜

監督: 原田眞人  原作: 井上靖
脚本: 原田眞人 、撮影: 芦澤明子 、照明: 永田英則 、美術: 山崎秀満
衣装: 宮本まさ江 、録音: 松本昇和 、編集: 原田遊人、音楽: 富貴晴美



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